冒頭まとめ

Kubernetes の 422 Unprocessable Entity は、区分が Invalid のエラーです。意味は明快で、内容は読めたが、検証を通らなかったという状態を指します。

このエラーの扱いやすさは、応答の details.causes にあります。実装を読むと、検証のエラー一覧がそのまま causes に変換され、各要素に どのフィールドか(field) と なぜ駄目か(reason) が入ります。reason に入る値は決まっていて、必須項目の欠落なら FieldValueRequired、値が不正なら FieldValueInvalid、対応していない値なら FieldValueNotSupported、禁止された操作なら FieldValueForbidden といった具合です。つまり、推測は不要です。どこがなぜ駄目かは応答に書かれています。

もう1つ、実務で最も誤解されている点があります。知らないフィールドを書いても 422 にはなりません。公式文書には、検証の水準を厳格にした場合、未知または重複したフィールドを検出すると 400 Bad Request で拒否する、と明記されています。さらに但し書きとして、既知のフィールドに型の違う値を入れた場合も 400 になる、とも書かれています。

したがって境界はこうなります。読めなかったのが 400、読めたが内容が通らなかったのが 422。綴りを間違えた、型を間違えた、というよくある失敗は 400 側に落ちます。422 が返っているなら、書式の問題ではなく意味の問題です。

エラーの概要

応答の構造は次の形です。details.causes が本体で、message はその要約にすぎません。

{
  "kind": "Status",
  "status": "Failure",
  "message": "Deployment.apps \"web\" is invalid: spec.selector: Invalid value: ...: field is immutable",
  "reason": "Invalid",
  "details": {
    "group": "apps",
    "kind": "Deployment",
    "name": "web",
    "causes": [
      {
        "reason": "FieldValueInvalid",
        "field": "spec.selector",
        "message": "Invalid value: ...: field is immutable"
      }
    ]
  },
  "code": 422
}

kubectl からの見え方には特徴があります。実装を読むと、区分が Invalid の場合だけ専用の整形が行われ、他のエラーのような Error from server (...) の形にはなりません。

The Deployment "web" is invalid: spec.selector: Invalid value: ...: field is immutable

対象の種類と名前を頭に置き、causes を箇条書きで並べる形です。Error from server が付いていないエラーは 422 の可能性が高い、という見分け方が成り立ちます。

まず最初に:causes の field と reason を読む

第一に、details.causes を開きます。ここに、問題のあるフィールドが列挙されています。複数ある場合はすべて出ます。

第二に、各要素の field を読みます。フィールドの位置が完全な経路で書かれているため、ファイルのどこを直すかがそのまま分かります。

第三に、reason を読みます。FieldValueRequired なら書き忘れ、FieldValueInvalid なら値そのものの問題、FieldValueNotSupported なら選択肢の外、FieldValueForbidden なら状況的に許されない操作です。

第四に、message の末尾を見ます。field is immutable とあれば、値が悪いのではなく変更してはいけない項目を変えたという意味です。

よくある原因と解決手順

原因1:不変のフィールドを変更しようとしている

実務で最も多く、そして最も紛らわしい形です。実装では、変更不可の項目に手が入ると field is immutable という文言の検証エラーが作られ、区分は FieldValueInvalid になります。値が不正だと言われますが、値そのものは正しいのです。問題は、その項目が変更を受け付けないことです。

代表例は Deployment の spec.selector です。

Before(版の情報を選別条件に含める):

spec:
  selector:
    matchLabels:
      app.kubernetes.io/name: web
      app.kubernetes.io/version: "1.2.3"   # 更新のたびに変わる

この書き方では、版を上げるたびに選別条件が変わり、そのたびに 422 になります。

After(変わらない値だけで選別する):

spec:
  selector:
    matchLabels:
      app.kubernetes.io/name: web
  template:
    metadata:
      labels:
        app.kubernetes.io/name: web
        app.kubernetes.io/version: "1.2.3"   # 印としては付けてよい

すでに作成済みの対象で変更が必要な場合、更新では通りません。削除して作り直すか、別の名前で新しく作ることになります。kubectl apply を繰り返しても状況は変わりません。

Deployment の選別条件のほか、Job の雛形、PersistentVolumeClaim の一部の項目なども同じ扱いです。共通の見分け方は、message の末尾が field is immutable であることです。

原因2:必須項目が欠けている

reason が FieldValueRequired の場合です。field に欠けている項目の経路がそのまま入ります。

The Pod "app" is invalid: spec.containers[0].image: Required value

causes は複数返るため、一度にすべての不足を確認できます。1つ直しては試す、という進め方をせず、返ってきた一覧をまとめて直すほうが早く終わります。

原因3:値が仕様の範囲外

reason が FieldValueInvalid、FieldValueNotSupported、FieldValueTooLong などの場合です。名前の形式違反はこの系統でよく見ます。

The Service "My-App" is invalid: metadata.name: Invalid value: "My-App":
  a lowercase RFC 1123 subdomain must consist of lower case alphanumeric
  characters, '-' or '.', ...

FieldValueNotSupported の場合、多くは許される値の一覧が message に併記されます。選択肢を調べ直す前に、まずエラー本文を読んでください。

カスタム資源でも同じ仕組みが働きます。実装を追うと、独自資源の検証も検証エラー一覧として返され、同じ 422 に変換されます。定義側に検証規則を書いている場合、その違反もここに現れます。

原因4:400 を 422 だと思っている

冒頭で述べた境界です。次の3つは 422 ではなく 400 になります。

1つ目は、知らないフィールドを書いた場合。公式文書によれば、検証の水準は Ignore・Warn・Strict の3つがあり、Strict では未知または重複したフィールドを検出すると 400 で拒否されます。kubectl の既定は --validate=true、つまり厳格な検証です。

2つ目は、同じフィールドを重複して書いた場合。これも同じ扱いです。

3つ目は、既知のフィールドに型の違う値を入れた場合。公式文書の但し書きに、この場合は 400 が返り、しかも未知フィールドの情報は示されず、最初に遭遇した致命的なエラーだけが報告される、と書かれています。

# 未知フィールドの検出を警告に留める(400 を回避して内容の検証まで進める)
kubectl apply -f manifest.yaml --validate=warn

綴り間違いを疑うなら 400 側、意味の間違いを疑うなら 422 側。この振り分けを最初に済ませると、調べる場所を間違えません。

原因5:適用する前に検出する

422 は、実際に適用しなくても検出できます。サーバー側で検証だけを行う指定があります。

# 検証だけ行い、実際には変更しない
kubectl apply -f manifest.yaml --dry-run=server

# 手元だけの確認(サーバー側の検証は行われない)
kubectl apply -f manifest.yaml --dry-run=client

重要なのは、手元だけの確認では不変フィールドの違反を検出できないことです。既存の状態と比較する必要があるためです。自動化の中で事前確認を入れるなら、サーバー側の指定を使ってください。

補足:似ているが別のもの

内容が読めない場合は 400 です。書式の壊れ、未知のフィールド、重複、型違いがここに入ります。実装でも、復号に失敗した場合は 400 を作る関数が呼ばれています。

アドミッションの仕組みによる拒否も 422 ではありません。実装を読むと、Webhook が返した状態コードがそのまま使われ、400 未満の場合は 400 に丸められます。文言にWebhookの名前が入っていれば、検証ではなく方針による拒否です。

同時実行や名前の衝突は 409 です(Kubernetes の 409 の記事)。「変更できない」という点では不変フィールドの 422 と似て見えますが、409 は他者との競合、422 は仕様上の制約という違いがあります。

権限が足りない場合は 403 です(Kubernetes の 403 の記事)。対象が見つからない場合は 404 です(Kubernetes の 404 の記事)。

切り分けの順序

  1. details.causes を開く。ここに、どのフィールドがなぜ駄目かが列挙されている。
  2. reason を読む。FieldValueRequired は書き忘れ、FieldValueInvalid は値の問題。
  3. message の末尾に field is immutable があるかを見る。あれば値ではなく変更可否の問題。
  4. 不変フィールドなら、更新では通らない。作り直すか、その項目を変えない設計にする。
  5. causes が複数あるなら、まとめて直す。1つずつ試すと往復が増える。
  6. 422 ではなく 400 が返っているなら、綴り・重複・型を疑う。--validate=warn で先に進める。
  7. Error from server の付かないエラーは 422 の可能性が高い。表示形式が違う。
  8. 事前確認はサーバー側の指定で行う。手元だけの確認では不変フィールドを検出できない。

確認コマンド集

# 1. 応答の causes をそのまま見る
kubectl apply -f manifest.yaml -v=8 2>&1 | grep -A20 '"code": 422'

# 2. 適用せずにサーバー側で検証する
kubectl apply -f manifest.yaml --dry-run=server

# 3. 未知フィールドの扱いを変えて、内容の検証まで進める
kubectl apply -f manifest.yaml --validate=warn

# 4. 既存の不変フィールドの現在値を確認する(Deployment の選別条件)
kubectl get deploy <名前> -o jsonpath='{.spec.selector}{"\n"}'

# 5. 適用しようとしている内容と突き合わせる
kubectl apply -f manifest.yaml --dry-run=server -o jsonpath='{.spec.selector}{"\n"}'

# 6. そのフィールドの仕様を確認する(許される値と必須かどうか)
kubectl explain deployment.spec.selector
kubectl explain pod.spec.containers.image

# 7. 定義側の検証規則を確認する(カスタム資源の場合)
kubectl get crd <名前> -o jsonpath='{.spec.versions[0].schema}' | head -c 2000

# 8. 監査の記録から 422 を抽出する
kubectl get --raw /metrics | grep 'apiserver_request_total.*code="422"'

Editor’s Note

422 の応答には、原因を特定するのに十分な情報が入っています。それを実際の記録で確認できます(Deployment of new version of application fails with field is immutable)。2024年3月、ある開発道具から配備したところ、版を上げるたびに失敗するようになった、という報告です。

貼られている応答が示唆的です。状態コードは 422、causes には対象のフィールドが spec.selector、区分が FieldValueInvalid、文言の末尾が field is immutable。さらに details には group が apps、kind が Deployment、name が対象名。調べるべきことがすべて1つの応答に入っています。

そして値を見ると、選別条件に版を示す印が含まれていました。版が上がるたびに選別条件が変わり、変更不可の項目を変えようとしていたわけです。「なぜ今回から失敗するようになったのか」の答えも、同じ応答の中にありました。

この構造を知っていると、対処の方向が変わります。field is immutable は、値が間違っているという意味ではありません。その項目を変えようとしたこと自体が問題です。したがって、値を直すのではなく、変えない設計にするか、作り直すかの二択になります。同種の報告では、対象を削除して作り直すことで解決した例が多く見られます。

422 に当たったら、message の1行で判断せず、causes を開いてください。フィールドの経路と区分の2つが揃えば、直す場所と直し方の両方が決まります。


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