冒頭まとめ
GitHub API の 409 Conflict は、リクエストの綴りや権限の問題ではなく、「リクエストの内容が対象の現在の状態と矛盾している」ことを示すコードです。GitHub 公式の API 定義(OpenAPI)で409が定義されているエンドポイントを調べると、実際の409は3系統に整理できます。第一に、本物のマージ競合です(ブランチのマージ API や上流ブランチとの同期 API が、競合時に409を返すと定義されています)。第二に、競合ガードです。対象が「あなたが見た時点」から動いたことを検出して操作を止める仕組みで、pull request のマージ API に sha を渡した場合の head 不一致や、ファイル更新(contents)API の sha 不一致がこれにあたります。第三に、リポジトリの状態が操作の前提を満たさないケースで、代表は空のリポジトリに対する Git 系・コミット系の API です(公式ガイドに、リポジトリが空または利用不能のとき REST API は 409 Conflict を返すと明記されています)。
同じくらい重要なのが、409だと思い込みやすいのに409ではないエラーです。「Reference already exists」(ブランチやタグが既に存在する)、「No commits between …」(差分のないプルリクエスト作成)、既存タグへのリリース作成は、いずれも 422 Validation Failed です。また、競合状態のプルリクエストをマージしようとした場合は 405 が定義されています。これらを409として調査すると出口のない回り道になるため、まずコードと系統の確認から始めます。
エラーの概要
409は「待てば直る」とも「直らない」とも一概に言えないコードで、系統によって正反対の対処になります。競合ガードの409は、最新の状態を取得し直して再実行するのが正しい対処です。マージ競合の409は、再試行しても同じ結果で、競合の解決そのものが必要です。空リポジトリの409は、初期化するまで何度でも返ります。
実際の応答例として、空のリポジトリのコミット一覧を取得した場合は次の形になります(公開されている実測記録と一致します)。
$ curl -i https://api.github.com/repos/<owner>/<empty-repo>/commits
HTTP/2 409
...
{
"message": "Git Repository is empty.",
"documentation_url": "https://docs.github.com/rest/commits/commits#list-commits"
}
message の文言が、系統を見分ける最初の手がかりです。Git Repository is empty なら原因3、マージ操作への応答なら原因1か2、ファイル更新への応答なら原因2です。
まず最初に:どの操作への409かで3つに分岐する
ブランチのマージ(POST …/merges)や上流との同期(POST …/merge-upstream)への409なら、マージ競合です(原因1)。pull request のマージ(PUT …/pulls/{n}/merge)への409は、リクエストに sha を渡している場合に head の移動を検出したガードです(原因2)。ファイルの作成・更新・削除(PUT / DELETE …/contents/{path})への409も、並行更新による sha の食い違いというガードです(原因2)。コミット一覧や Git データベース系(git/refs、git/commits、git/trees など)の取得・作成への409で、message が Git Repository is empty なら、リポジトリが空です(原因3)。
よくある原因と解決手順
原因1:本当にマージ競合が起きている
ブランチ同士をマージする API(POST /repos/{owner}/{repo}/merges)は、公式定義のとおり、マージ競合があるときに409を返します。同じ定義には、すでにマージ済みなら 204、base や head が存在しなければ 404 と、結果ごとの割り当ても明記されています。フォークを上流に追随させる API(merge-upstream)も、競合で同期できない場合は409です。
この系統の409に対して、API の再試行は意味を持ちません。競合の解決は API ではできず、作業コピーで行います。
Before(同期スクリプトが409を一時エラー扱いして再試行し続ける):
# 上流の変更を main に取り込む定期ジョブ
curl -s -o /dev/null -w "%{http_code}\n" -X POST \
-H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/<repo>/merges \
-d '{"base": "main", "head": "upstream-sync"}'
# → 409 を受けてもリトライを繰り返す(何回やっても 409)
After(409 は「競合の解決が必要」という結果として扱い、解決フローへ回す):
status=$(curl -s -o /tmp/resp.json -w "%{http_code}" -X POST \
-H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/<repo>/merges \
-d '{"base": "main", "head": "upstream-sync"}')
case "$status" in
201) echo "マージ完了" ;;
204) echo "すでにマージ済み。何もしない" ;;
409) echo "競合あり。ローカルで解決して push するか、PR を作成して解決する"
# 例: git fetch && git checkout main && git merge origin/upstream-sync
exit 1 ;;
esac
原因2:対象が「見た時点」から動いた(競合ガード)
pull request のマージ API に sha パラメータを渡すと、「この head のときだけマージしてよい」という指定になり、公式定義のとおり、head がその sha と一致しなければ409が返ります。これはレビューが済んだ内容と実際にマージされる内容のすり替えを防ぐガードで、409は「レビュー後に新しいコミットが積まれた」という通知です。対処は、head を確認し直し、必要なら再レビューのうえ最新の sha で再実行することです。
ファイルの作成・更新・削除(contents API)の409も同じ構図です。更新には現在のファイルの sha を渡す必要があり、取得からリクエストまでの間に誰かが同じファイルを更新すると、渡した sha が古くなって409になります。典型は、GitHub Actions の並列ジョブが同じファイル(バージョン表、集計結果など)を更新する構成です。
Before(並列ジョブが同じファイルを取得→更新し、先に書いた方以外が409になる):
jobs:
update-manifest:
strategy:
matrix:
target: [a, b, c] # 3ジョブが同時に同じファイルを更新する
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- run: |
sha=$(gh api repos/$REPO/contents/manifest.json --jq .sha)
gh api -X PUT repos/$REPO/contents/manifest.json \
-f message="update ${{ matrix.target }}" \
-f content="$(base64 -w0 new.json)" -f sha="$sha"
After(直列化するか、409 のときだけ sha を取り直して再試行する):
jobs:
update-manifest:
concurrency:
group: manifest-update # 同じファイルを触るジョブを直列化する
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- run: |
for i in 1 2 3; do
sha=$(gh api repos/$REPO/contents/manifest.json --jq .sha)
if gh api -X PUT repos/$REPO/contents/manifest.json \
-f message="update" \
-f content="$(base64 -w0 new.json)" -f sha="$sha"; then
exit 0
fi
echo "409 の可能性。sha を取り直して再試行 ($i)"
sleep 2
done
exit 1
ガード系の409の対処は共通で、「最新を取得し直してから、やり直す」です。再試行そのものは正しい対処ですが、古い sha のまま繰り返しても何度でも409になる点だけ注意してください。
原因3:リポジトリが空、または操作の前提となる状態にない
GitHub の公式ガイド(Git データベースの利用ガイド)には、Git リポジトリが空か利用不能(unavailable)の場合、REST API は 409 Conflict を返すと明記されています。利用不能とは、典型的にはリポジトリの作成処理が進行中の状態です。リポジトリ作成 API の直後にコミット一覧・ブランチ・Git データベース系の API を呼ぶ自動化で、この409に当たります。
公式ガイドは解決策も示しています。空のリポジトリには、contents API(PUT /repos/{owner}/{repo}/contents/{path})で最初のファイルを作成すればリポジトリが初期化され、以後 Git 系の API が使えるようになります。
Before(作成直後の空リポジトリにブランチを作ろうとして409になる):
curl -s -X POST -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/user/repos -d '{"name": "new-repo"}'
curl -i -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/new-repo/git/ref/heads/main
# → 409 {"message": "Git Repository is empty."}
After(作成時に初期化するか、contents API で最初のコミットを作る):
# 方法1:作成時に auto_init を指定し、最初のコミット(README)を作らせる(公式パラメータ)
curl -s -X POST -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/user/repos -d '{"name": "new-repo", "auto_init": true}'
# 方法2:contents API で最初のファイルを作成して初期化する(公式ガイドの方法)
curl -s -X PUT -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/new-repo/contents/README.md \
-d '{"message": "init", "content": "'"$(printf '# new-repo' | base64)"'"}'
このほか、状態の前提を満たさない操作の409は各所に定義されています。たとえば GitHub Actions の実行の取り消し API にも409が定義されており、取り消せる状態にない実行への要求がこれにあたります。共通する読み方は「操作は正しいが、相手が今その操作を受けられる状態ではない」です。
補足:409ではない類似エラー
409と思われがちな検証エラーの正しい行き先です。ブランチやタグの作成で同名の参照が既に存在する場合の Reference already exists、差分のないプルリクエスト作成の No commits between、既存タグと重複するリリース作成は、いずれも errors 配列を伴う 422 Validation Failed で、409ではありません(422 の読み方は GitHub API の 400 の記事を参照)。競合などでマージできない状態のプルリクエストへのマージ要求は、409ではなく 405 と定義されており(405 の記事)、マージ可否は事前に pull request の mergeable 属性で確認できます(公式ガイドは mergeable が計算されるまでポーリングする方法を案内しています)。権限不足や不存在は、private リポジトリの秘匿のため 404 です(404 の記事)。並行リクエストの多さそのものが弾かれる場合は secondary rate limit で、403 または 429 です(403 の記事、429 の記事)。
切り分けの順序
- コードを確認する。422(Validation Failed)・405・404・403・429 なら、409ではないのでそれぞれの調査に切り替える。
- どのエンドポイントへの409かを確認する。マージ系なら原因1、sha を渡す操作(PR マージ・contents)なら原因2、Git 系・コミット系なら原因3。
- message を読む。Git Repository is empty なら初期化(auto_init または contents API)で解決する。
- ガード系(原因2)は、最新の状態(head の sha、ファイルの sha)を取得し直してから再実行する。並行更新が常態なら直列化する。
- マージ競合(原因1)は API の再試行では解決しないため、ローカルまたは PR で競合を解決する。
確認コマンド集
# 1. コードと message を確認する
curl -i -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/<repo>/commits 2>&1 | grep -E "^HTTP|message"
# 2. リポジトリが空かどうかの確認(コミット一覧の409自体が空の証拠になる)
curl -s -o /dev/null -w "%{http_code}\n" -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/<repo>/commits
# 3. PR の head と マージ可否を確認する(原因2の再実行前)
curl -s -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/<repo>/pulls/<number> | \
python3 -c "import json,sys; d=json.load(sys.stdin); print(d['head']['sha'], d['mergeable'])"
# 4. ファイルの現在の sha を取得し直す(contents の409の再実行前)
curl -s -H "Authorization: Bearer <your-github-token>" \
https://api.github.com/repos/<owner>/<repo>/contents/<path> | \
python3 -c "import json,sys; print(json.load(sys.stdin)['sha'])"
Editor’s Note
原因3の実例として、GitHub 自身の API 定義リポジトリに残る記録があります(Schema Inaccuracy: GET /repos/…/commits can respond with 409 if repository is empty)。2021年、Octokit のメンテナが「コミット一覧 API の応答定義に409が欠けている」と報告したもので、空リポジトリへの実測の curl 出力(HTTP/2 409、message は Git Repository is empty.)がそのまま添えられています。空リポジトリの409は、GitHub 公式の API 定義からさえ一時的に漏れていたほど見落とされやすい挙動だった、ということです。本記事の執筆にあたり取得した現行の公式 OpenAPI 定義では、このエンドポイントに409が定義されており、報告は反映済みです。約5年前の記録ですが、空リポジトリへの Git 系 API が409を返す挙動と、contents API で初期化するという回避策は、現行の公式ガイドにそのまま明記されています。
409は「あなたの見ている世界と、GitHub 側の今の状態がずれている」ことを伝えるコードです。ずれの正体が競合なのか、追い越されただけなのか、そもそも前提が欠けているのか。エンドポイントと message でそこを見極めれば、再試行すべきか、解決すべきか、初期化すべきかが決まります。
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